くじらを追いかける若隠居 タロット占い師編

タロットリーディングの記録

気持ちのよい朝。

晴れた日曜日の朝、私の大事な人が旅立った。

とても気持ちのよい朝。

呼吸は浅くなっていたが規則正しかった。

それまでの2日間と違って、静かな時間だった。

私が歯を磨きに行っている間に呼吸は止まった。

最後の呼吸を見ることができなかったことに後悔はない。

 

 

 

 

 

最初の夜は痛みめと麻酔でろれつが回らなくなっていたが、必死で何かを訴えていた。

彼女がいいたいことをわかってあげることができなかったことが、そのときは悲しかった。

彼女は思いのほか強い力で私の腕をつかんだ。おそらく体勢を変えたかったんだろうけど、上手にできなかった。

耳が聞こえないと訴えていたのはわかった。

数時間おきにいろいろ訴えるが、私にできることは少なかった。

 

夜が明ける頃、彼女は落ち着いて眠っていた。

私は一度自宅へ戻り、家の掃除をし、シャワーを浴び、仮眠をした。

夕方目覚めてぼーっとしていたら、彼女の容体が悪くなったという連絡が入り

病院に向かった。

 

昨夜と違うのは、痛みでは起きるけど、それ以外はこちらの呼びかけには反応しなかった。

数時間おきに起きて痛みを訴えるのだが、そのまえに眉間にしわが入るので目安になる。彼女に痛み止めを入れてもらう?と聞くと弱くうなずく。痛み止めを入れてもらってうとうと眠る、それを何回か繰り返した。

次の、そろそろ痛み止めが切れる時間になった頃、

お見舞いに来てくれた方が声をかけてくれたが、彼女が目を開けることはなかった。

彼女の顔を観察したが、眉間にしわが入りかけるのだが目を覚ますことはなく、そのまま眠り続けていた。

 

深夜、うっすらと目を開けていたが、反応はにぶかった。

血圧を図るために腕に巻くバンドを痛がった。

喘鳴がずっと続いていたのが、だんだん静かになっていった。

規則正しい呼吸音だけになり、私も横で眠った。

夜が明けるころ、家族を呼んだ方がよいと言われ家に電話をした。

相変わらず、呼吸は静かだが規則正しい。

 

不思議と静かな時間が過ぎ、私は穏やかな気持ちだった。

そしてそのまま最後の朝を迎えた。

 

 

最初の夜、彼女は何度か私に微笑んだ。

私を心配させないためだったのかな?って、今なら思える。

きっとそのときの私は必死な顔をして彼女を見つめていたんだろう。

 

とても密な時間だった。